おてらおやつクラブ 【SDGs 貧困】

   お仏壇のある家庭では、日々欠かさずにお供え物をしている。供えるものは5種類あり、「香」、「花」、「灯燭(とうしょく)」、「浄水」、「飲食(おんじき)」であり、これらは「五供(ごくう)」と呼ばれる。うち、食べ物にあたる「飲食」は、毎日炊き立てのご飯(お仏飯)を朝にお供えするが、それ以外に法事やお盆に和菓子やジュースなどのお供え物がある。お仏飯は湯気がなくなる15分~30分で下げ、感謝して頂く。お菓子などの供え物は期間が過ぎれば「おさがり」として小分けして配ったり、自分の家で頂いたりする。万が一、時間が経って傷んでしまったものは半紙につつんで処分することが許されている。

   こうしたお供え物のうち、お菓子や果物、食品や日用品などが傷む前に、仏さまからの「おさがり」として経済的に困難な状況にあるご家庭へ「おすそわけ」する活動がある。「おてらおやつクラブ(特定非営利活動法人おてらおやつクラブ 奈良県磯城郡 安養寺 松島靖朗代表)」だ。全国のお寺と支援団体、そして檀信徒ならびに地域住民が協力し、2020年10月時点で1,524寺院、473団体が活動中である。おやつを受け取った子どもの数は月間のべ約16,000人である。

   日本で「貧困」という言葉にあまりなじみがないかもしれないが、生活保護を受ける寸前の生活に困窮している人々を支援する法律「生活困窮者自立支援法」は平成25年(2013年)4月に施行されている。厚生労働省データによると、日本国内では子供の7人に1人が貧困状況である。

   この「おてらおやつクラブ」はそうした子供たちを支援するために2014年に活動を開始した。お寺が中心となってのSDGsの目標1「貧困をなくそう」に取り組んでいる活動モデルが評価され、2018年にグッドデザイン賞を受賞している。今後もお寺と支援団体、そして民間からの寄付などにより、生活するのが困難である子供たちに素晴らしい支援が続いていくことを願う。

   「貧困」の定義は世界銀行が定めていて、現在では「1日1.9ドル(約200円)未満で生活している人々」をさす。世界の貧困率および貧困層の数は、年々減少しているが、いまだに世界人口の10%、7億3600万人の人々が貧困状態にある。貧困の理由はさまざまであり、例えば、失業、ケガや病気、離婚、紛争、内戦、自然災害、教育問題、社会的孤立などがある。分布としては南アジアのインド、バングラデシュ、サハラ以南のアフリカのナイジェリア、エチオピア、コンゴ共和国などで、これらの国々で極度の貧困層が多い。特にインドの貧困層は1億7,000万人以上で、その割合は世界の貧困層の約4分の1である(世界銀行統計2015年)。

   貧困は先進国も例外ではない。現在、3000万人もの子供たちが母子家庭・父子家庭・交通遺児その他の境遇の中、貧困状態で必死に暮らしている。日本では児童扶養手当や母子父子寡婦福祉資金の貸付などの金銭的支援のほか、引きこもりの相談や教育支援などにより、こうした子供たちをサポートしている。

   まずは私たちの日常の生活で、食糧の浪費をしない、貧困についての理解をさらに深める、できる範囲で貧困問題に取り組みつつ支援をしていく、などを実践していきたい。こうした行動が明日の貧困をなくす一歩である。 

 

おてらおやつクラブ HP

https://otera-oyatsu.club/

世界銀行 貧困ライン 

https://www.worldbank.org/ja/news/feature/2014/01/08/open-data-poverty

 

 

パンチョス萩原(Soiコラムライター)