スマート農業がつくる未来 【SDGs イノベーション 高齢化対策】

   毎年、秋になると新米が出荷され、店頭に並びはじめる。今年もその季節がやってきた。

   農業の発展に大きく影響するのは、農地面積と労働力である。日本における15歳以上の産業別就業者数は、平成30年で6664万人であるが、うち農業従事者は203万人で、全就業者の3%足らずである。最近農業の後継者不足で、高齢化が一段と加速しており、現在農業を営む労働者の70%が60歳を超えている(一般社団法人 農協協会)。

   今後さらに農業における高齢化が進めば、日本の自給率にも大きくマイナスとなることは必至だ。しかしながら、農業の現場では、依然として熟練の作業者による手作業でなければできない作業も多く、人手の確保、省力化や重労働などの軽減が深刻な課題となっている。

   そんな高齢化対策として、「スマート農業」がいま脚光を浴び始めた。平たく言えば、最先端技術を用いて農作物の収穫率アップと労働力不足の解消を目指す農業のことである。

   「スマート農業」として代表的なものは4つある。

   1つ目は「農業用ドローン」による肥料・農薬散布や、高精度カメラや多様なセンサーを搭載しての作物の生育状況のモニタリングなどに用いられている。

   2つ目は「Cloud:クラウド」や「ICT:情報通信技術」、「IoT:Internet of Things」によるデータ活用だ。例えば圃場(ほじょう:農産物を育てる場所)や畑に設置したセンサーやカメラにより、日々の温度や湿度などのデータをインターネット経由でクラウドに保存しておき、スマホやPCから水や肥料を供給する機器をコントロールしたりできるようになる。

   3つ目は「AI」技術により、野菜の色や形状などから収穫時期を計算したり、害虫がいる場所を画像認識技術で特定したりできる。また、気温や湿度などによって、作物ごとに最適な環境づくりができるようになる。

   4つ目は「農業ロボット」である。力のいる仕事や繊細な作業をこなすロボットを導入し、労働力不足と生産性向上に役立てる。ロボットトラクタや自動田植機、自動給水システムや自動給水システムのような無人で畑や田んぼを耕したり、収穫を行なったり、作物を自動制御でコントロールできる幅広いロボットの活用も検討されている。

   「スマート農業」は農地不足や生産者不足への対応として最先端技術を用いるものだが、自然災害や害虫の被害などに強い農作物の品種改良は、これまで通り、何世代もの交配、または育種を行うことで対応している。この交配や育種は、アメリカ・モンサント社などが進めてきた「遺伝子組み換え」とは自然の力で突然変異させるか、人工的に行なうかという差はあるが、どちらも農地や労働力の課題には解決策を与えていない。

   食の安全を守りつつ、価格も抑えて低農薬・高品質の美味しい農作物が食べられるようにするには、農業の保護と同時にイノベーションがかかせない。「スマート農業」の導入によって、農作物の生産が安全かつ効率的に行なわれ、高齢化による労働力不足も解消でき、次世代の若者たちにも農業技術を継承していければ、日本の自給率維持にも大きな支えとなるものである。

  

  スマート農業がつくる未来を待ち望んでいる。

 

パンチョス萩原(Soiコラムライター)

 

参照:

農林水産省

「スマート農業の展開について」

https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/index-110.pdf

「農業用ドローンの普及に向けて」

https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/pdf/hukyuukeikaku.pdf